2025年4月7日、オレゴン州の空港でHondaJet HA-420が滑走路をオーバーランし、海に部分的に沈んだ状態で停止した。パイロットと4人の乗客は救助され、後に全員が病院から退院した。4月9日にはフロリダ州でも別のHondaJetが滑走路を外れ、芝生に突っ込む事故が発生した。負傷者はいない。
HondaJet HA-420に関しては、2015年の型式認証以来、35件の事故・インシデントが記録されており、そのうち29件が離着陸時の滑走路逸脱に関連している。
要因としては、濡れた滑走路や追い風に加え、スラストリバーサーの非搭載、小径タイヤ、高い着陸速度といった機体設計上の特徴が、地上滑走時の操縦性に影響を与えている可能性がある。
HondaJetオーナーおよびパイロット協会(HJOPA)は、こうした傾向を改善するため、2025年5月に「HJOPA Proficient Pilot Program」という訓練プログラムを開始予定である。このプログラムでは、HondaJet特有の操縦技術を強調している。
たとえば以下のような点が挙げられている:
着陸速度の加算は危険:突風に備えて速度を増すのは逆効果
柔らかい接地を避ける:1.5G程度のしっかりとした接地で、タイヤの摩擦を最大化し方向安定性を確保
ノーズホイールの早期接地(デ・ローテーション):素早く前輪を地面につけることで制御性が向上
横滑り(サイドスリップ)は推奨されない:クラブアンドキック法で対応し、最後の瞬間に進行方向を調整する
また、FAA(米国連邦航空局)は、4月11日に特定のHA-420を対象とした新しい耐空性改善命令(AD)を発行予定である。これは、フラップ制御プッシュロッドの腐食防止処置に関するもので、今回の事故とは無関係である。
HJOPAは、「HondaJetの着陸は“何もしないことの技術”」と表現し、正しい訓練と手順に従えば、HondaJetは安定して着陸できる機体であると強調している。
参考資料
https://aviationweek.com/business-aviation/aircraft-propulsion/hondajet-runway-excursions-raise-questions
着陸後の滑走時に 左右への揺れ(パイロット誘発振動)が起きやすく、車輪の接地圧(WOWモード)の変化によりブレーキが作動しないケースも。
NASAや日本運輸安全委員会の報告でも、方向制御を失った逸脱例が複数報告されている。
HondaJetにはスラストリバーサーが無く、ブレーキのみに依存して停止する設計。
タイヤが小さく接地面積が限られていることも影響。
初期モデルはスピードブレーキも無く、現在はElite IIで改善。
車輪が短く翼が地面に近いため、片翼が接地しやすい。
最大クロスウィンド制限は20ktで、それを超えると設計上リスクが増す。
一部事故ではクロスウィンドが制限を明らかに超えていた。